「くちづけ」のDVDをみた。
以前深夜のゲストトーク番組に貫地谷しほりが出ていてこの映画のことを話していたので。
実際にあった新聞の片隅の事件にヒントを得た宅間孝行が脚本を書いた舞台劇が映画化されたもの。
知的障がい者のグループホームに、かつて一世を風靡したマンガ家(竹中直人)の娘マコちゃん(貫地谷)が入所して、マンガ家もスタッフとして雇われることになる。それまで男性と二人きりになるとパニック発作を起こしてしまっていたマコちゃんだったが、ホームの他の入所者(すべて男性)とは打ち解け、いろいろ珍事件を起こしながらもおだやかに過ごす日々が続く。しかし、マンガ家は次第に体の不調を自覚するようになり検査した結果・・・
知的障がい者がおかれている現実・・・さまざまな偏見はもとより、家族に食い物にされたり、性的虐待を受けたりすることや、刑務所の受刑者の何割かは知的障がい者であることやその再犯率が高いこと、ホームレスにも知的障がい者が多いことなどが作中で語られる。望んで障がいを持つ体に生まれたものでも産んだものでもないのに、それらの何もかも本人と家族が負わなければならない。そして、家族が扶助できなくなった時取り残される彼らはどうなるのか。
この映画は「泣ける映画」であって、障がいの本当のところも描けていないし、見る人の偏見を覆す力もない・・・と批評しているブログなども読んだのだけれど、私はそうは思わなかった。
知的障がいのあるマコちゃんがかわいらしくてかわいらしくて、そのマコちゃんがあんなことになって憤りを感じた。
今この時も日本中にマコちゃんがたくさんいて、途方にくれていたりマコちゃんのようになったりしているかもしれない。その元凶は他でもない政治なのだ。
特に意識もせずにこの映画を見た人の何人かは、自分の身のうちの偏見に気付くだろうし、そのまた何分の一の人はマコちゃんが一人でも生きていける世の中が大切だと思ってくれるだろう。
そう信じたい。