彩の国で

投稿者: | 2024年12月7日

夫の弟は現在、右半身まひで、失語症になっている。そして多分、高次脳機能障害。
墓掃除が済んで弟の家にたどり着いたら、LDKの窓際にしつらえた介護ベッドに弟は座っていて、ぽろぽろと涙を流していた。
感情を制御する脳のどこかの損傷なんだろう、気持ちが昂ると泣いてしまうようで、「よく生きていてくれたね」と夫と二人で声をかけるとさらに涙があふれた。
両脚に装具、右手にも装具をつけていて、腰かけた状態でひとりで立つのは難しく、彼の妻が介助している。言葉は、肯定と否定の意は何とか伝えられるけれど、自分の要求を発語するのはムリで、こちらで意図をくみ取って促してyesかnoを聞くしかない。
経済的なことはとりあえず何とかなる模様。ただ、弟の妻はタイ生まれなので各種手続きは大変苦労したようで、またいろんな手続きの折に差別的な対応も少なからずされたようで、弟のいないところでは泣いて私たちに訴えていた。
彼女が日本に来た20数年前はここまでのひどい国では(多分)なかったのだが本当に申し訳ないこと。

もてなしの食事は最初日本食を作ろうとしたらしいが、一人息子(彼も難病で自宅療養を余儀なくされている)が、「普段食べないタイ料理の方がいいよ」と進言してくれたらしく、着いた日の晩はトムセープ(豚軟骨と香草のスープ。香草をみな家で栽培しているので一味も二味も違った)、翌朝はトムヤムプラー(白身魚のスープ)、お昼はグリーンカレー、晩はお寿司にしたけれど、帰る日の朝はジョーク(鶏肉のもち米おかゆ)と、おいしい料理を作ってくれた(グリーンカレーは教えてもらいながら一緒に作った)。
介護で疲れているだろうに全方位気配りの行き届いたもてなしだった。

筋肉痛の話。
去年から10㎏以上痩せている私の喉元はありていに言えばバアサンのようにシワシワなのだが、弟の妻にはそれが気になったらしい。「おねえさん、失礼します」と言って私の背後にまわって私の首をマッサージし始めた。日本に着てすぐの頃、タイ古式マッサージのお店に勤めていたのだそうで、最初はマッサージを心地よく受けていたのだが・・・
以前、テレビなどで、タイ式マッサージを芸人さんなどが受けに行って、あまりの痛みに叫んだり逃げたりするのを見たけれど、そんなのは熱湯風呂と同じで芸人さんをイジって見せるテレビ的な誇張だと思っていた。
ちがいます!正真正銘痛いです。激痛です!死にそうです!
せっかくマッサージしてくれているのだから痛いなんて言っては申し訳ないと思って最初は辛抱していたのだけれど、もうほとんど暴行のような痛みになってきて身も世もなく、痛いーーーーもう駄目ーーー許してーーー!と涙目で訴えるのだけれど全身余すところなくマッサージしないとバランスが狂ってかえって害になると言って、どうにも終わってくれない。
結局彼女も汗まみれになるほど1時間半くらい苛まれ続けてようやく終わってもらえた。終わっても痛みで立ち上がれない。山歩きした時など翌日以降に痛みが出るけれどこの場合はすぐさま痛く、そして一晩寝たら遅効性のも加わってもう・・・
今日で4日目で激痛はおおむね取れたけれどまだ身動きするとかなり痛い。
施術直後は確かに首のシワはなくなっていたけれど、あれは打ち身の腫れみたいなものだったのかもしれない。今はしわも元通り。
これぞ、骨折り損のくたびれ儲け、だ。
心身の健康のために、私はタイマッサージをお勧めしません(泣)。


帰り道の高速の脇に立ってた「ロヂャース」(楳図かずお先生が縞々シャツを購入していたという、あの)。