はんざい

投稿者: | 2021年3月10日

私が聞いた東京大空襲の話は、父方の祖母のものと母方の祖父のものなのだが、どちらも真に迫った話はすべて母経由で聞いたものなので、その母もない今は親族の経験談として新たに聞くことはかなわなくなってしまった。

母方は、祖父を除いてみな疎開していたようなので、祖父1人が罹災した。布団を濡らして川に逃げたようなことを聞いたように思う。
祖父は晩婚で母がまだ生後5か月というその頃すでに54歳で、今の私とそう変わらない。木挽き職人で体を使う仕事をしていたのだからそんなに衰えてはいなかったのかもしれないが、火事嵐の中をよくも逃げ延びたものだ。
直接に話を聞けたらどんなによかったか。私が小学1年生になった年に79歳で死んでいるからどうしようもない。

父方の祖母は当時は33歳だったはずで、満で1歳くらいだった父とその上に小学校にすでに上がっていただろう父の兄がいた。上の子は疎開していたのだろうか。祖母は父と一緒に逃げたのだろうか。その辺も詳しく聞いていない。祖母とは中学2年で縁が切れてしまったし、私が大学生の時には亡くなっていたらしい(後から聞かされた)のでどうしようもない。

いずれにしろ、私の両親は3月10日の前にすでにこの世に生を受けていたけれども、親が生き延びることができたからその後貧しいなりに成長することができ、私が存在できたのだろう。
10万人の無辜の市民を焼き殺したアメリカに、どうしたって親和の情など抱けない。


今日もまた4鉢、クリスマスローズを夫の職場の人に差し上げてしまったが、これは家に残してあるもの。
こぼれダネからの発芽を育てたら、こんなにきれいな子になった。
悼みの思いを込めて。