この間、テレビで「風の電話」というものの存在を知った。
大槌町にある私設電話ボックスで、古びた黒電話が置かれている。震災前に土地の所有者が亡き人と話すために設置したのだが、震災後大事な人を失くした人のためになるようにと開放されて、現在では全国だけでなく海外からも来訪者があるという。
死ぬとわかって覚悟したものでもいざ死なれればいつまでもいつまでも思う。まして突然降ってわいた災害で大事な人を失くしたら。
その様々な感情を受け止めてくれるこんな場所をつくってそだてることのできるのは、本当に人間というものの素晴らしいところだと思う。
亡くなった人とは話せない。
電話線の切れた電話はいわば「ごっご遊び」だ。
だけど、そんなおとぎ話にすがらずにはいられないときもある。
也々も、母も、父も、もうどこも痛くなく元気で、どこか心地よい明るいところで楽しく暮らしていてほしい。
死は単に無でしかないのに、そんな夢想を私も持っている。
亡くなった人たち、亡くなった獣たち。どうかやすらかに。


